「所得ってなに?」
「所得税は何種類あるの?」
「所得が多すぎて覚えられない!」
FP3級の勉強をしている方の中には、上記のような悩みを持っている方も多いでしょう。
本記事では、FP3級の勉強を始めたばかりの方でもわかりやすいように、所得・所得税の10種類を紹介します。
それぞれの計算方法や課税方法もくわしく解説していくので参考にしてください。
FP3級で「所得控除」「損益通算」などを学ぶ際に、基礎知識として所得の種類を理解しておく必要があります。
簡単に10種類の所得の違いを理解するだけでも
FP3級の勉強を進めやすくなるよ!
【FP3級】所得税とは
所得税とは、1年間(1月1日~12月31日)に得た所得に対してかかる税金のことです。
「所得」とは、
1年間に得た収入 – 経費
のことだよ!
【FP3級】所得・所得税の種類
所得は所得税法によって、以下の10種類に分けられています。
所得税の種類 | 概要 |
---|---|
利子所得 | 預貯金や公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金など |
配当所得 | 株式の配当金・投資信託でもらえる収益分配金など |
不動産所得 | 土地や建物を貸すことによる所得のこと |
事業所得 | 農業や漁業などによる所得 |
給与所得 | 会社からもらう給料やボーナスのこと |
退職所得 | 退職によって受け取れる退職金などのこと |
山林所得 | 所有期間が5年を超える山林の売却による所得 |
譲渡所得 | 土地や建物、株式、骨董品などを売却した際の所得 |
一時所得 | 「一時的」に得られた所得のこと |
雑所得 | どれにも当てはまらない所得 年金や副業など |
所得税①利子所得
利子所得とは、預貯金や公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金などを指します。
公社債は、国や会社が持つ借金のことだよ!
「公社債投資信託」は、株式を一切使用せずに公社債を運用すること!
利子所得の計算方法
利子所得の計算方法は以下の式で表され、利子で得た利益はそのまま収入になります。
利子所得 = 収入金額
利子所得の課税方法
利子所得の課税方法は、以下の表の通りです。
課税対象 | 課税方法 |
---|---|
預貯金の利子 | 利子を受け取るタイミングで20.315%が源泉徴収される。 |
公社債などの利子 | 「申告分離課税で20.315%を納付」 「申告不要」のどちらかを選択する。 |
20.315%の内訳は、所得税20%・復興特別所得税0.42%です。
所得税②配当所得
配当所得とは、株式の配当金・投資信託(公社債投資信託を含まない)でもらえる収益分配金による所得を指します。
配当所得の計算方法
所得税の1つである「配当所得」の計算方法は、以下の通りです。
配当所得 = 収入 – 株式などを取得するための負債利子
「株式などを取得するための負債利子」ってなんやねーん!
たとえば、銀行とかでお金を借りて株式をゲットした場合やな。
お金を借りている分の利子を払わなあかんやろ?それが「負債利子」や!
配当所得の課税方法
配当所得の課税方法は、「上場株式」と「上場株式以外」で異なります。
課税対象 | 課税方法 |
---|---|
上場株式 | 配当金の受け取り時に20.315%が源泉徴収される。 |
上場株式以外 | 上場株式以外は、配当金の受け取り時に20.42%が源泉徴収される。 |
所得税③不動産所得
不動産所得とは、不動産(土地や建物)を貸すことによる所得のことです。
「不動」って書いてある通り、
動かない土地や建物のことを意味してるんやで!
具体的には、アパートやマンション、土地を貸して収入を得ている場合が不動産所得に該当します。
不動産所得の計算方法
3つ目の所得税である不動産所得は、以下の計算式で表されます。
不動産所得 = 総収入額 – 必要経費 (- 青色申告の特別控除額)
計算式の意味が分かりやすいように、
総収入額と必要経費の具体例を紹介していくで!
総収入額 | 家賃収入・土地代の収入・敷金や礼金(返還する予定がないもの)更新料など |
---|---|
必要経費 | 固定資産税・都市計画税・不動産取得税・損害保険料・減価償却費・修繕費など |
不動産所得の課税方法
不動産所得の課税方法は、他の所得と合わせて税額を計算する「総合課税」であり、確定申告が必要になります。
所得税④事業所得
事業所得は、以下のような事業による所得を指します。
- 農業
- 漁業
- 製造業
- 小売業
- サービス業
- 卸売業
- その他の事業
「業」ってついてたら、大体は事業所得!
事業所得の計算方法
事業所得の計算は、以下の式で表されます。
事業所得 = 総収入額 – 必要経費 (- 青色申告の特別控除額)
また、事業所得を計算するうえで「減価償却」について理解しておく必要があります。
減価償却は別の記事で解説しているので、参考にしてね!
事業所得の課税方法
事業所得の課税方法は、他の所得と合わせて税額を計算する「総合課税」であり、確定申告をする必要があります。
所得税⑤給与所得
給与所得とは、アルバイトやパート、会社員などが会社から受け取る給料・賞与(ボーナス)などのことです。
給与所得の計算方法
給与所得の計算は、以下の式で表されます。
給与所得 = 収入額 – 給与所得控除額
また、給与所得の金額によって、以下のように「給与所得控除額」が異なります。
給与などの収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162.5万円以下 | 55万円 |
162.5万円超~180万円以下 | 収入金額 × 40% – 10万円 |
180万円超~360万円以下 | 収入金額 × 30% + 8万円 |
360万円超~660万円以下 | 収入金額 × 40% + 44万円 |
660万円超~850万円以下 | 収入金額 × 40% + 110万円 |
850万円超~ | 195万円(上限) |
参考:給与所得控除|国税庁
FP3級では、ややこしい計算式は覚えなくてOK!
下限が55万円、上限が195万円ということだけ覚えておこう!
よく耳にする「103万円の壁」というのは、給与所得控除の55万円と、基礎控除額の48万円を合わせた金額のことです。
103万円の壁を知っていて、55万円か48万円のどちらかを覚えておけば
引き算をすれば求められるよ!
給与所得の課税方法
給与所得の課税方法も「総合課税」が採用されており、確定申告が必要になります。
会社員・アルバイトなどをしている方は
「俺、確定申告してねえぞ!?」
と思っているでしょう。
安心してください。ほとんどの方は、源泉徴収で自動的に税金が引かれています。
毎月の給与をもらう際に税金が源泉徴収されて、年末調整を行っている場合は確定申告が不要です。
しかし、以下の3つに当てはまる方は、確定申告が必要になります。
- 年収が2,000万円を超える人
- 給与所得・退職所得以外で20万円を超える所得がある人
- 複数の会社から給与を受け取っている人
FP3級では、2,000万円・20万円のところを覚えておこう!
「2」つながりでなんとなく覚えやすい!
所得税⑥退職所得
退職所得とは、その名の通り、退職によって受け取ることができる退職金などを指します。
退職所得の計算方法
退職所得の計算方法は、以下の通りです。
退職所得 = (収入金額 – 退職所得控除額)× 1/2
最後に1/2をかけ算するところを忘れがちなので気を付けよう!
ちなみに僕もよく忘れるで…
覚えれへん気持ちもよくわかるわ…
頑張って長年働いたのに、税金取りまくったらかわいそうやろ。
だから最後に半分にしてあげるねん!
また、退職所得控除額は、勤続年数によって計算式が異なる点を覚えておきましょう。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 (最低80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年) |
また覚えにくい計算式が来たっ!
20年超の800万円は「40万円×20年」で覚えたらええんやで。
800万円のところで20年分消費してるから、70万円をかける時には20年分引くねん!
退職所得の課税方法
退職所得の課税方法は、他の所得と分けて税金を計算する「分離課税」が適用されます。
「退職所得の需給に関する申告書」の提出の有無によって、課税方法が異なります。
退職手当を払ってくれる人に対して提出する必要があるよ!
「退職所得の需給に関する申告書」とは、退職手当などを受ける際に記入して提出する必要がある書類です。
- 「退職所得の需給に関する申告書」を提出している場合
申告書を提出している場合は、退職金などの支払い時に自動的に源泉徴収されるため、確定申告が不要です。
- 「退職所得の需給に関する申告書」を提出していない場合
申告書を提出していない場合は、退職金の額に20.42%をかけた金額が源泉徴収されます。そのため、確定申告を行わなければなりません。
所得税⑦山林所得
山林所得とは、所有期間が5年を超える山林を伐採して売却したり、木が残ったまま売却したりすることによる所得のことです。
5年以内に売ったらどうなるん…?
5年以内の場合は、事業所得・雑所得のどっちかになるんやで。
山林を土地付きで譲渡するときは、土地の部分が譲渡所得になるんや。
へーーーー難しいな。
FP3級では覚えなくてええか!
山林所得の計算方法
山林所得の計算方法は、以下のように表せます。
山林所得 = 総収入額 – 必要経費 – 特別控除額(最大50万円)(- 青色申告の特別控除額)
参考:山林所得|国税庁
山林所得の課税方法
山林所得の課税補法は、他の所得と分けて税額を計算する「申告分離課税」が適用されるため、確定申告が必要です。
所得税⑧譲渡所得
譲渡所得とは、以下のようなものを譲渡(売却)した場合に発生する所得のことを指します。
- 土地
- 建物
- 公社債
- 公社債投資信託
- 株式
- ゴルフ会員権
- 骨董品
- 書画
一応詳しく解説していくよ!
でも、FP3級の場合は覚えてなくても問題ないよ!
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算方法は、大きく3つのパターンに分かれています。
- 土地・建物を譲渡した場合
まず、土地・建物を譲渡した場合は、以下のような計算式で表されます。
譲渡所得の分類(土地・建物) | 譲渡所得の計算式 |
---|---|
分離短期譲渡所得 (譲渡した年の1月1日の時点で5年以内) | 収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 |
分離長期譲渡所得 (譲渡した年の1月1日の時点で5年超) | 収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 |
土地や建物の特別控除額は最大5,000万円!!
まあ、FP3級では覚える必要はないけど…
- 株式などを譲渡した場合
株式などを譲渡した場合は、以下のような計算式になります。
株式などの譲渡所得 = 収入金額 – (取得費 + 譲渡費用 + 経費)
株式などを譲渡する場合は、長期や短期の区分がありません。
- 土地・建物・株式など以外を譲渡した場合
土地・建物・株式など以外(ゴルフの会員権や書画など)を譲渡した場合は、以下のような計算式になります。
譲渡所得の分類(土地・建物・株式など以外) | 譲渡所得の計算式 |
---|---|
総合短期譲渡所得(所有期間が5年以内) | 収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 |
総合長期譲渡所得(所有期間が5年超) | 収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 |
土地・建物・株式など以外の場合は、長期と短期を合わせて
特別控除額が最大50万円に設定されているよ!
参考:譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)|国税庁
譲渡所得の課税方法
譲渡所得の課税方法も3パターンに分かれています。
- 土地・建物を譲渡した場合
まず、土地・建物を譲渡した場合の譲渡所得の課税方法は、以下の通りです。
譲渡所得の分類(土地・建物) | 課税方法 |
---|---|
分離短期譲渡所得 | 申告分離課税 39.63% |
分離長期譲渡所得 | 申告分離課税 20.315% |
どちらも申告分離課税だね!
譲渡所得の分類名にも、「分離」って書いてあるから覚えやすい!
- 株式などを譲渡した場合
株式などを譲渡した場合の課税方法は、他の所得と分けて税額を計算する「申告分離課税」です。
税率は20.315%が適用されます。
- 土地・建物・株式など以外を譲渡した場合
土地・建物・株式など以外を譲渡した場合の課税方法は、以下の通りです。
譲渡所得の分類(土地・建物・株式など以外) | 課税方法 |
---|---|
総合短期譲渡所得 | 総合課税(全額) |
総合長期譲渡所得 | 総合課税(1/2は合算しない) |
これも「総合」って書いてあるから覚えやすい!
土地・建物・株式など以外を譲渡した場合は、他の所得と合算して「超過累進課税」で納める必要があります。
所得税⑨一時所得
一時所得とは、名前にもある通り「一時的」に得られた所得を指します。
これまでに紹介してきた8つの所得のうち、一時的なものはすべて一時所得に分類されます。
一時所得の計算方法
一時所得の計算方法は、以下の式で表されます。
一時所得 = 総収入金額 – 収入を得るための支出額 – 特別控除額(最大50万円)
参考:一時所得|国税庁
一時所得の課税方法
一時所得の課税方法は、他の所得と合わせて税額を計算する「総合課税」であり、確定申告が必要です。
一時所得の金額すべてが合算されるわけではなく、一時所得金額に1/2をかけた金額を合算する点に注意しておきましょう。
1/2かけるのもよく忘れる…
所得税⑩雑所得
雑所得とは、これまでに紹介した9種類の所得のうち、どれにも当てはまらない所得のことです。
具体例として、以下のようなものが挙げられます。
年金と税金の関係も知りたい方は、以下の記事も見てね!
雑所得の計算方法
雑所得の計算方法は、以下の式で表されます。
雑所得 = 公的年金などの雑所得 + 公的年金以外の雑所得
公的年金などの雑所得は「収入金額 – 公的年金等控除額」で表され、公的年金以外の雑所得は「総収入金額 – 必要経費」で表されます。
それぞれを合わせたものが雑所得になります。
参考:雑所得|国税庁
雑所得の課税方法
雑所得の課税方法は、他の所得と合わせて税額を計算する「総合課税」であり、確定申告が必要です。
【FP3級】所得・所得税のまとめ
本記事では、所得・所得税の10種類について、計算方法や課税方法を詳しく解説しました。
FP3級を勉強するうえでは、10種類の所得の違いを簡単に理解しておく程度で問題ありません。
「総合短期譲渡所得」とかは近年のFP3級の試験問題ではほとんど出てこないけど、昔は出題されていたので、余裕がある人は覚えておこう!
しかし、配当所得・給与所得・退職所得・一時所得・雑所得の5つは、FP3級でも比較的問われることが多いため、詳しく理解しておいて損はありません。
まずは、簡単に10種類の所得の違いを理解できたらFP3級の勉強を進めていき、分からないところがあればもう一度10種類の所得を学ぶことがおすすめです。
FP3級の合格を目指して頑張ろう!